shousetu saikai
小 説 「 S A I K A I 」



第20話 ホッキとの格闘?


夕方5時ごろになると、マスターが魚と一緒に出社する。
ベンツのトランクには、マグロやはまちやホタテなどびっしり入っている。
「おーいネタ上げてくれー!」
と1階の階段から聞こえたら、一目散にいかなければいけない。
いつも、突然だから、びっくりしてしまう。
ネタを店に運んでいる間に、マスターは、ベンツを近くの駐車場に止めに行く。
なんせ、帰る時間には、地下鉄も走っていないわけなんで、
マスターのベンツでみんなの家まで、送ってくれる訳だ。

生まれて初めてベンツに乗ることになる。
けっこう、それも楽しみの一つだ。

魚が運ばれると、さっそく仕込みだ!
これまた、面白い。
今までの店では、あまり魚はさわらせてもらえなかったが、
出島では、どんどん触らせてくれる。

最初に教えてもらったのは北寄貝(ホッキガイ)だ。
生きた北寄貝を洋食のナイフのようなもので、貝の口につっこみ、
貝柱のところを切ってあげると簡単にはずれる。

これがなかなか出来ない。あんぐり口を開けている北寄貝をそーっともってきて、
一気にナイフを入れると上手くいく。

でも、一度失敗すると、北寄貝だって、警戒するので、がっちりと口を閉じてしまう。
そうなると、やりにくい。

その、貝柱もお通しに使うので、
貝殻になるべく貝柱をくっつけないで取らなければいけないのである。

うまく出来たかどうかは、貝柱をの大きさとヒモの形を見れば一目瞭然だ。

ごまかしがきかない!

貝とはいえ、奥が深い!

ここで、北寄貝の仕込み方公開

 @貝から本体をはずす
   ・なるべく口のあいているヤツからやっつける
   ・貝柱をなるべく貝につけない事
 A本体とヒモ(ヒダヒダ)と貝柱をばらばらにする
 B本体に包丁を入れ、開く
 Cはらわたを取り出す
  ・あまりがっちり取り出すと美味しいところも取れてしまうので注意
 D沸騰した塩水と冷たい水を用意し、さっと茹でる(黒い部分が綺麗な紫になる)
  ・ゆですぎに注意する。さっと火を通す程度
  ・さっとゆでたら、冷水につける
  ・生きの悪いのは長めに火を通し、生きのいいのは短め
 Eゆであがった本体をサラシで拭く

  ・アクのようなものがついているのできれいにとる
  ・あんまりゆっくりやっていると、
体温が貝に伝わり鮮度が落ちるので注意
 
         本体は出来上がり

けっこう、ヒモがめんどくさい。
先に、汚いものをとってから、ゆでるのだが、
そっとやらないと貝柱がとれてきまったり、ヒモが切れてしまう。

また、本体もうまいのだが、けっこうヒモもうまい。
俺なんかも、本体よりヒモのほうが安くてうまいと思う。
通の人は、ヒモのほうが上手いといっている。
けっこう、貝類は本体も上手いが、ヒモも歯ごたえがあってうまい。
味も凝縮している感じだ。
ヒモは、本体と貝殻をくっつけている部分で一番動いているところだから、
きっと上手いと思う。

よくヒラメのエンガワもそうですね。

エンガワについては、又の機会にしますね。
赤貝のヒモもけっこううまい。寿司もうまい。ホタテのヒモも酒のつまみになる。

だからこそ、めんどくさくっても、真剣にやらなければいけないんだ。

ホッキを貝殻から出すスピード、開く時の綺麗さ、ゆで方、
ヒモのさばきどれをとっても奥が深い。最後にタッパに並べるときも大切。

とにかく、マスターは手際がよく、早い。

技を盗んで、はやく一人前になるぞー!



                           つづく





inserted by FC2 system