shousetu saikai
小 説 「 S A I K A I 」

第8話 ホームシック


 新しい生活がはじまり、3ヶ月がたった。
あれだけ、絶対に連絡するなと言われたのに、彼女のところへ電話をしてしまった。
俺の居所は言うわけにいかない。
公衆電話で100円玉が猛スピードで、落ちていく・・・・・。
電話が終わると、なぜか空しかった。部屋に戻っても、空しかった。
だんだん、電話をする回数も増えた。
いつも、俺は突然の電話だ。彼女は、どこからかかってきているのかは、
当然分からないだんだん心のすれ違いが生じ、結局彼女は、
「もう私のことはいいから・・・・・・」っていわれ終わった。



■ 出 逢 い

 俺の板前修業は、順調だった。
持ち前の元気のよさで、
おまえは返事がよいと言われチーフにかわいがられた。
なんかたのまれると 「ハイ!」と気持ちよく返事をした。
親父から、おそわったことだ。

 そういえば、親父は居酒屋に洗い場として入社したにもかかわらず、
1ヶ月にもならないとき、すでに店長になっていた。
とにかく尊敬した。恐ろしい生命力。パワーを感じた。
同じ、板前として、よくアドバイスをもらった。

ところで、彼女の件だが 新しい彼女は一向にできなかった。
ウエイトレスのアルバイトで、かわいい女子高生が入店してきたが、
俺自身の高校中退コンプレックスというか、話さえ出来なかったし、
たまに食堂で一緒になっても、あまり言葉をかわさなかった。
硬派の板前を気取っていたが、実は仕事とはうらはらで、
女の子と話をするのが、恥ずかしくってしかたなかった。

そんな、俺にも とうとう 新しい出会いがあった。
洗い場のアルバイトのレイちゃんだ。
レイちゃんは、決して美人ではなかったが、身長は俺よりひくく、
わりとはハキハキして性格美人だ。

俺がてんぷらをあげて
「どんぶり一丁!」というと
かわいい声で「あいよー!」と元気な返事がかえってくる。

洗い場には、60歳ぐらいのおばちゃんもいて、
そのときのタイミングで、おばちゃんが返事をするときもある。
「どんぶり 一丁!」  と言った後、 おばちゃんの返事だとガックリ。
レイちゃんの返事だと 超ラッキー♪
忙しい日曜日は、たのしかった。
なんせ、レイちゃんは何回も俺の掛け声に答えてくれる日なんだ。
俺の片思いだけど、ひそかな楽しみだった。

そんなある日、俺は早番で、レイちゃんと一緒に帰る事になった・・・・・・・♪

          ♪ ヤ ッ タ ー ♪♪



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