shousetu saikai
小 説 「 S A I K A I 」


■ 第3話 逃亡 ■

親父はとにかく日本海側に向かって走り始めた。
荷物いっぱいのシャコタンのクラウンは
真っ暗な峠を猛スピードで走っていった。
 俺は、TR−1300で警察無線を傍受していた。
実際は、指名手配されているわけではないのだから、
警察無線なんかで、自分達のことが、話される訳はないのだが、気になってしかたなかった。
日本海側に出ると、海ぞいにとにかく北に向かって走り続けた。

俺は、昔から車が好きで、酔ったことなどなかった。
しかし、さすがの俺もあまりの長距離のため、車に酔ってしまい、秋田あたりで、
具合が悪くなってしまった。

精神的なことだと思うのだが17歳の俺には、夢のような出来事だった。

秋田で、旅館を探した。
親父は、何度か車を降りて、道行く人に旅館を聞いた。
車に帰ってくると、「何を言っているのかまったくわからん?」
秋田弁は、かなりのものらしい。

なんとか旅館は確保し、泊まることができた。
もちろん、宿帳には、いいかげんな住所と名前をかいていた。
親父は、手持ちの300万円がはいった封筒を布団の下にひいて寝ていた。
なんせ、全財産なんだから・・・・・

翌朝、すぐに出発し、八戸からフェリーにのった。

俺たちは、本州を捨て、未知の島 北海道に向かった。

北海道ってどんなところだろう?
これから俺はどうなっていくのだろう。
最後まで逃げ切れるのだろうか?

嫌なことは全部津軽海峡にすてて、
大きな不安とかすかな期待をのせたフェリーは苫小牧へとむかった。


つづく

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