shousetu saikai
小 説 「 S A I K A I 」

■第1話 旅立ち■


俺は鈴木修人。17歳。
岐阜県の工業高校に通うごくごく一般的な学生。
基本的には男女共学だが、同じクラスには、女子はいない。
同じ学年にも、女子がいない。
学校には、5人ぐらいしか女子がいない。
ほとんど男子校である。

実は、この高校を選んだのは、けっこう単純な理由からだ。
中学3年の時、初恋の女性がどこの高校にいくのかが一番の関心ごとだった。
もちろん片想いである。
彼女は、不通の女子とはまったく違い独創的な女性で美人系、身長も俺より大きい。
あまりちゃらちゃらしていない。
勉強は出来る。
習字などを書かせると男勝りの大胆かつ
力強い文字を書く。
きりっと引き締まった感じの女性である。

小心者の俺は、まともに話すことも出来ない状態だった。
たまに話ができると、超ハイテンションになってしまい、
授業中でも大声で話してしまい先生に注意を受けてしまうほどだった。

そんな、僕のマドンナの高校進学の噂が耳にはいった。
彼女は、K工業高校(ほとんど男子校)の電子課を希望しているらしいと・・・・・。
男勝りの彼女なら十分考えられると鵜呑みし、俺もK工業高校電子課を希望した。
結局、おれは、K工業高校に受かったのだが、
マドンナは、別の普通高校を受験していた。
もっと情報収集をすればよかったと反省している。
でも、その高校は、ちょっと俺にはレベルが高いのでどのみち無理だった。
せめてもの救いは、同じ電車に乗れることだった。
たまに遠くから見ていたぐらいで、とても話など出来ない状態だったが、
遠くから見ているだけで、俺は満足だった。

K工業高校電子課に入ったわけだが、部活は文科系の無線部に入部した。
マドンナとの進展はまったく無く、無線で知り合った女の子と仲良くなった。
そして、毎日のように無線で、長々と話をしていた。
小心者の俺にとって、顔の見えない無線は、好都合だったようだ。

高校3年になり、そろそろ卒業写真もとり終わった7月、
俺の人生を大きく変える出来事が起こってしまった。



1978年(昭和53年)7月10日17時53分
俺は、屋上にある、無線部の部室で 
いつものように、トリオTS−520Vをいじっていた。

そこで、校内放送かかった。
「鈴木修人さん 至急事務室まできてください。・」

事務室にいくと 玄関には、親父が立っていた。
「ちょっと話ががあるんで 一緒にきてくんないか?」
親父の顔は、いつもとは違った。
こころなしか、ひとまわり小さく見えた。

急いで、帰宅の準備をして、親父の車に飛び乗った。

学校から、親父のクルマで帰ったのは、入学試験の発表を見に行ったとき以来だ。

久々だった。

車中での会話

親父 「明日で、うちの店は、倒産する。
       今晩、店が終わってから 夜逃げをしようと思うが 
           おまえは俺についてくるか?
              それとも 母さんのおる西山にもどるか?」

俺  「・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・・!」

  俺は、15秒ほど考えたあとすぐに答えた。


    「俺 親父に、ついていく!」


       とにかく、ここから 新しい人生がスタートしたのだ!



inserted by FC2 system